第2章 引
「妙な格好だのう……何処から来おった、小娘」
「私も、興味があります」
「日の本言葉、通じちょるんか?」
「…………」
覗き込まれた状態のまま。
彼らは、私の顔の上で会話を進める。
赤、青、白。
ヨーロッパに見る、国旗みたいな配色。
背景の青空に、良く映える。
「言葉は解るか?」
おじ様の問い掛けに、首を縦に振った。
「名は何と言う?申してみよ」
殿様みたいな物言いに。
「………… 、です」
名乗りを上げる。
「俺は信長……織田前右府信長である」
おだのぶなが?
あの、おだのぶなが?
本物の殿様で。
「ホトトギス、殺す人だ」
私の呟きに。
「殺したんか…?」
「怖ーい」
他の二人が身を引いた。
「殺してねぇし!」
後世の人が、人柄を詠んだ詩だから。
実際の『織田信長』は、そういう人じゃないのかも。
「……知らんなぁ」
「私の御代とは、違うようです」
「おいも知らん」
三人揃って首を傾げる姿が。
何だか、とても可愛くて。
私は小さな声を出して、笑ってしまった。
「どうした、。可笑しなことがあったか?」
織田信長は、片方の眉を上げて問う。
「言うてみよ」
この覗き込まれた状態じゃ、逃げることもできない。
聞かれたことには、全て正直に答えなければ。
髑髏の盃にされてしまう。
「揃って首を傾げるのが、可愛かったので」
私は素直に答えて、三人の様子を窺った。
下手したら、殺られる。
夢の中でも、それは嫌だ。