第2章 引
「お初に御目にかかります。私は那須与一……那須資隆与一で御座います」
見上げた視線の先には。
青空に溶け込むような青い服を着た、美少年。
長い髪が、風に揺れる。
「…………」
なすのよいち?
そんなアイドル、いたっけ?
人並みに、テレビも雑誌も見てるけど。
こんな綺麗な男の子、知らない。
「目を覚ましましたよ、御二方」
彼の声に。
起き上がる間もなく、更に二つの影が落ちてきた。
「お前は誰ぞ?」
最初に聞いた声の主は。
大きな目を瞬かせて、首を傾げた。
「何処ぞの間者、では無さそうだのう」
もう一人は、長髪のおじ様。
口の端を上げて、ニヤリと嗤う。
「どちら、でしょうか……」
美少年は、目を細めるけれど。
「判らんにゃー」
おじ様は、愉しそうに。
「声ば出んのか?」
もう一人は、訝しげに。
私の顔の上で、会話をしている。
あの。
見知らぬ御三方。
アンタら、顔が近いです。
お願いだから、もう少し離れてください。
恐怖心よりも、その近さに。
意識が集中して、喋りにくい。
この状況じゃ。
起き上がることも、できませんから。
一旦、退いてほしいんですけど。