第2章 引
「可愛い、ですか。『えんず』では、ないようですね」
美少年が、そう言って表情を和らげる。
「、可愛いは、お前だにゃー」
織田信長は、そう言って、私の頭を撫でた。
「明日になれば、オッパイーヌが戻ってくる。がどちらか、そこで判る」
とりあえず起き上がれと、声を掛けられて。
差し出された手を、握り返せば。
そのまま、力強く腕を引かれた。
「大丈夫か?」
何度か掛けてくれたその言葉に。
「大丈夫です」
そう返すと。
彼は先程までとは違う表情で。
「よか」
そう言って、笑った。
立ち上がってから気付いた。
この人の胸と背中にある、アレは。
「島津紋!」
刀と同じ、アレだ。
私は、腕の中の『それ』をギュッと抱いて。
吹き抜ける風に目を閉じる。
何か、関係あるのだろうか。
この『刀』と。
「何だ、島津んお家ば、知っちょるんか?」
その声に、目を開けて。
彼に視線を向ける。
「おいは、島津豐久。島津家久が子じゃ」
彼はそう言って、また笑った。
しまづとよひさ?
聞き慣れない、その名前。
我が家とは何十年も接点のなかった『島津』の名が。
何故、夢の中で出てくるの?
これは何を暗示してるんだろう?
おじいちゃんが言っていた『来るとき』は。
この人に、関係あるんだろうか。