第2章 引
今日はおじいちゃんに頼まれた、大事なお使いがあって。
研究室を出て、早々に帰るつもりでいた。
着替えたのは、そのせいで。
服に不釣り合いな大荷物も。
駅のロッカーに放り込むつもりだった。
夢の中の私は。
重くて大事な。
託されたその品を、両腕に抱いて。
リュックサックを枕に、草むらの上に寝転ぶ。
「気持ちいい」
風が、サワサワと前髪を擽る。
心なしか、空気が美味しい。
『夢って、こんなにリアル?』
空の青さも。
流れる風も。
緑の香りも。
地面の冷たさも。
医務室では、感じないモノでは?
気絶してるとはいえ、誰の声も聞こえない。
この世界に、独りぼっちみたいだ。
「………不思議」
肌で感じる空気が。
鼻で感じる匂いが。
何かが違うと、警鐘を鳴らしているのに。
目蓋が酷く重い。
考えても、答えは見つからないと。
考えることを、放棄する。
自分の意志とは思えない程の眠気の襲われ。
そのまま目を閉じた。
夢なら、早く覚めて。
お使いが済んでないってばれたら。
おじいちゃんに、叱られちゃう……。