• テキストサイズ

霞始靆【DRIFTERS】

第2章 引


「ちょっと手狭だが、」

そう言って案内された廃城は。

雨風を凌ぐには、忍びない状態だ。

幸いにも、寒さを感じる季節には遠いようで。

穴が空いた壁は、あまり気にならない。

キョロキョロとその空間を見回していると。

「まぁ、座れ」

織田信長に促される。

私は彼の正面の木箱に、腰を下ろした。

「で、、お前はどうやって此処に来た?」

その質問を、脳内で反芻する。

夢の中です、そう答えていいものか。

それとも……?

「俺達は皆、石造りの通路の男に会った……気付けば、この世界に『居た』」

「!」

「心当たりがあるな?」

「……はい」

少しずつ暗くなる空が。

少しずつ不安を煽る。

あの警鐘は、気のせいじゃない。

きっと、耳を塞ぎたくなるような悪い知らせを。

この中の誰かが、私に告げる。

「暫しお待ちを」

美少年“なすのよいち”はそう言って、慣れた手付きで火をくべる。

パチパチと音を発てて、火と煙が上がる。

「あの……此処は、何処でしょう?」

薪の火が揺れる様も。

その熱も。

夢とは思えない程に、鮮やかだ。

「夢ではなか」

その声に、視線を向ける。

「……おいも、最初はそう思ったど」

壁に凭れた“しまづとよひさ”は。

遠い昔を懐かしむように、口角を上げて。

「夢ではなか」

もう一度、そう言った。

/ 13ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp