第2章 引
白い通路と、無数の扉。
眼鏡の紳士と、大きな机。
同一人物の意図で、飛ばされた『世界』。
『此処』が夢の世界ではないと。
授業で習った、“織田信長”に説かれる。
各々が、この世界に来た経緯を語ってくれたけど。
「…………?」
何故か、やっぱり、私だけ違う気がする。
戦闘能力0だし。
何か特技があるわけでもない。
お役に立てる、気がしない。
「何ぞ、言いたいことでもあるか?」
目が合った“織田信長”に問われ。
黙って、首を振る。
何を言ったらいいか、判らない。
「遠慮はいらん。この世界に来て、不安もあるじゃろうて」
教科書で知る、“織田信長”と違って。
この“織田信長”は、私を気遣ってくれる。
私は、意を決して口を開いた。
「私……皆さんと一緒に居て、いいんでしょうか?」
此処が、何処とか。
自分の能力とか。
言いたいことも、聞きたいことも。
本当は色々あるけれど。
一番不安なのは。
安穏と暮らしてきた、元の世界と。
この世界の違い。
電気も水道もない、この世界で。
一人では生きていけないということ。
今、放り出されたら。
突然、突き付けられた現実を。
受け止められる、自信がない。