第7章 story【巴形薙刀】
それからしばらくしたある日、巴形は近侍として莉央の側に控えていた。
「主、文が届いていた」
「あ、うん。ありがとう」
巴形は莉央の机の上にどっさりと書類を置いた。
莉央はその量に圧倒されながらも、笑顔を崩さずに受け取った。
ふと、莉央はその中に紛れるように挟まれていた封筒を、するりと引き抜いた。
「……え?」
「どうした? 主」
巴形は主の表情の変化を見逃さなかった。
「……叔父さん、亡くなったって知らせが届いたの」
巴形には主のその声が、酷く無機質なものに聞こえた。
けれど次の瞬間には、莉央は巴形に笑顔を向けていた。
「多分、近々お葬式に行くと思う。その時の近侍もあなただろうから、準備しておいてね。さて、おやつの時間だから、そろそろ休憩にしましょう」
莉央はそう言うと、自分の部屋から出ていった。
巴形はその背中を追いながら、視線をほんの一瞬机に残された手紙に向けた。