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付喪神様の御座します処【刀剣乱舞】

第7章 story【巴形薙刀】


葬儀は恙無く終わった。
莉央も一切表情を崩さずに気丈に振る舞っていた。
巴形も側に控えながら、その様子をずっと見ていた。


それから一週間ほど経った。
「主、少しいいか」
就寝の準備をしていた莉央の元に、巴形は姿を見せた。
「どうしたの? こんな時間に」
莉央は怪訝な顔で彼を見上げた。
「主、これを受け取ってほしい」
巴形は両手で包んだそれを、莉央に差し出した。
「これ……」
それは、以前割ってしまった茶碗であった。
「金継ぎというらしい」
茶碗には、いく筋か金色の線が入っていた。
「大切なものだったと聞いた。ならば簡単に捨ててしまうわけにはいかないだろう」
莉央はそれを受けとると、自分の手の中を見下ろした。
「あ、あれ……おかしいな……」
莉央はその中にひらりと涙が一滴落ちるのに気がつくと、自分の頬に触れようと指を伸ばした。
けれどそれよりも早く、巴形の掌が莉央の頬に触れた。
「主、もしも我慢をする必要があるなら俺を頼れ」
巴形の言葉に莉央は、自分の中で何かが崩れるような音を聞いた。
莉央の部屋に、彼女の嗚咽が広がった。
巴形は一晩中、その声を抱きしめ続けたのだった。
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