第5章 time after time【山姥切国広】
「ふぅ、疲れたぁ~」
一頻り街を巡った莉央は、街の中を流れる小川のほとりに腰をかけた。
「おい。休むのはいいが、本来の目的を忘れてないだろうな?」
山姥切はその隣に立って、主を見下ろした。
「ん~。私の本来の目的は、祭りを楽しむことだよ?」
「……まさか、買い出しは俺を連れ出す口実だったのか?」
へらへらと笑う主に、山姥切はより一層表情を険しくさせた。
けれど祭りの香りに当てられた莉央は、そんなことなどお構い無しなのである。
「まぁまぁ。ほら、山姥切も座んなよ」
主に手を引かれた山姥切は、渋々その言葉に従った。
「ふわぁ~。こんなにのんびりできるなんて、いつぶりだろ」
莉央は大きく伸びをして、新鮮な空気を吸い込んだ。
辺りは祭りを楽しむ人々で賑わい、暖かな風が流れている。
「あ、そうだ。ちょっと待っててね」
莉央は思い立ったように立ち上がると、足早にどこかへ駆けていった。
「お、おい……!」
山姥切は主の突然の行動に、ただ遠ざかる背中を眺めるばかりであった。