第5章 time after time【山姥切国広】
「おぉ~。本当に賑やかになってるねぇ」
桜舞う街中を莉央は軽やかな足取りで駆けている。
しかしその後を追うのは、眉をひそめた山姥切国広である。
「俺は買い出しだと聞いたんだが?」
山姥切は駆け回る莉央が自分の元へと戻ってきた時、わき出た不満と疑念が混ざった視線を向けた。
「うん、買い出しだよ!! 買い出しの日に、たまたまお祭りがやってたんだよ!!」
一切曇りのない莉央の瞳に、山姥切は辟易と深くため息をついた。
二人は祭りで色めく街を歩いた。
二人の頭上には、たくさんの桃燈が春の風に揺れている。
そして莉央は、軒を連ねる屋台に目を奪われていた。
「おい、こんなことしている暇はあるのか? 買い出しは……」
「いいじゃんいいじゃん!! たまにはさ。山姥切も、こういう日くらいパーっとしちゃおうよ」
莉央は山姥切の手を取ると、華やぐ街を駆け抜けた。