第5章 time after time【山姥切国広】
今年の桜の開花日は、例年よりもだいぶ早かった。
その上、春時雨にも襲われて桜並木を写している川面は、すっかり花筏が浮かび、木々は過ぎ去った季節を芽吹いた新緑で伝えていた。
莉央は懐かしい街を歩きながら、大きく深呼吸をした。
時間遡行軍との闘いが終結してから数年後。
莉央は審神者の任を解かれ、普通の人として生活していた。
彼女は賑やかな街を、一人歩いている。
(よくここに来たなぁ……懐かしい)
かつて本丸があった場所から程近いこの街は今、春の祭りに色づいていた。