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付喪神様の御座します処【刀剣乱舞】

第4章 ある暖かい日の朝【歌仙兼定】


それから数十分後、莉央は縁側を縮こまりながら歩いていた。
意を決して着替えを行い、本丸の様子を見回っているのだ。

「おー、一晩でこんなになんのか」
「そりゃ今日は冷える訳だ」
「? 何してるの?」
ふと、庭の池を覗き込む薬研藤四郎と厚藤四郎が、莉央の視界に入った。
「お、大将じゃねーか。おはよ!」
「おはようさん、大将。ほれ、見てみろよ」
薬研が池を指差すのを見て、莉央は庭へ降りて同じように池を覗き込んだ。
「昨日から妙に寒かっただろ? そのおかげで、池の水が一晩で凍っちまった」
厚はなんだか楽しそうに言った。
自然と、莉央の気分も楽しくなってくる。
「おぉ~。本当だ! ……そうだ、ここでスケートなんかできそうじゃない?」
「スケート? なんだよそれ」
厚が初めて聞く単語に首をかしげた。
「確か、この前大将がテレビで見てたヤツだよな!? なんか氷の上をツーっと滑って……」
薬研の言葉に、莉央は目を輝かせながら大きく頷いた。
「そうそう、昔ちょっとやっただけなんだけどね……」
そう言って莉央は氷の上に右足を踏み出した。
続いて左足を浮かす。
ーーそれはほんの一瞬の出来事だった。
莉央の足元の氷に、ヒビが走る。
そして莉央の体が、大きな水しぶきを上げながら、冷たい池の中へ沈んだ。……どうやら、まだ氷は薄かったようだ。
薬研と厚の顔が、目の前で起こった惨事に青く染まる。
「大将ーーー!!」
冴えた空気を切り裂くように、二人の叫び声が響いた。
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