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付喪神様の御座します処【刀剣乱舞】

第3章 例え自分が何者でも【山姥切国広】


「だめったら! ほら、絆創膏あるから貼ってあげるよ」
「構うなと言っているだろ!」
思わず出た山姥切の叫びは、莉央もーーそして自分でも驚く程のものであった。
ふと、二人の視線がぶつかった。
山姥切は驚きに見開かれている主から、強引に視線を外した。
「……なんでそんなに構うんだ。所詮、俺なんて写しで」
「写しとか!!」
今度は莉央が大声を出した。
「写しがどうとか……私はあなたがどんな道を歩んできたか分からない……。検討もつかない……。けど、私はあなたが怪我をしていたら、とても辛いし……あなたは」
ここで莉央は大きく息を吐いた。
「大切な、人だから」
真摯に自分を見上げる莉央の視線に、山姥切は動揺を隠せず狼狽えた。
「ほら、傷見せて。帰ったらちゃんと消毒もするからね」
それ故に、山姥切はこれ以上彼女に抵抗することが出来なかった。

山姥切は大人しく手当てを受けた。
「うん、これでよし」
莉央の笑顔は、更に彼を動揺させる。
それを紛らわせるように、山姥切は勢いよく立ち上がった。
「そろそろ、出るぞ。また敵が俺たちを見つけるかもしれない」
その時、彼らの周囲の茂みが揺れた。
「……!! まさか……」
「チッ。もう見つかったか」
山姥切は歯ぎしりをしながら、柄に手をかけた。
その直後、茂みから先程の倍はいるであろう遡行軍が姿を現した。
「山姥切……!!」
「あんたはそこにいろ!! この程度俺が!!」
けれどその言葉はどこからか鳴り響いた銃声に掻き消された。
その銃弾は、山姥切の腿を掠めた。
「しまっ……!!」
ほんのかすり傷であったが、彼の注意を削ぐには十分であった。
次々に山姥切に降り注ぐ刃。
山姥切はそれを辛うじて往なしていく。
けれど遡行軍の短刀が、彼の腹部を捕らえた。
鈍い痛み。
足元には自分が流した赤が広がる。
山姥切は、薄らいでいく意識を繋ぎ止めることができなかった……。
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