第2章 《レオ B.D》 その名前
「凄いのはジルだけじゃない。
アランだって、ルイだって、ユーリだって、ロベールさんだって、シドだって、レオだって…
皆、皆が持っている知識だったり、技術だったり心でこんなに弱くて未熟な私を見守ってくれて教えてくれて、背中を押してくれる。本当に皆凄いよ。
感謝してもしきれないし皆尊敬している。
シュタインのゼノ様やアルバートさんだって。」
要点を書き留めるその手を止めてすうっとひと息深呼吸をするようにしてリアは微笑んだ。
「私は私を支えてくれる皆のためにもこの国のプリンセスとしてちゃんとやって行かなきゃいけないって思っているよ。
だから、レオ。私にもうちょっと力を貸してくださいね。」
その目と合った瞬間、言いようのない熱が胸を支配した。
その熱はじわじわと徐々に胸の中心から体中を這うようにゆっくりと、でも確かに広がっていった。
まだ小さなその火を隠し笑い返す。
「こんなに可愛いプリンセスにお願いされて断る男なんかいないでしょ。」
「またそんなこと言って…でもありがとう。」
頬を少し赤らめ初心な反応をしつつも感謝の言葉を紡ぐその唇に妙な欲が出た。
掛けていた眼鏡を机に置き、時計を見遣る。
ちょうど座学の時間ももう終わる。
「はい、よくできました。頑張り屋のプリンセスで俺も教え甲斐がるよ。
次は外交についてやろうかな。」
座学の時間のはじめにやった前回の学習内容についての小テストの結果を返す。
今回も難なく合格点を取った彼女は本当によく頑張っている。
いつも何事にも一所懸命で
人を信じて疑わず、誰にも平等な優しさと花のような美しい笑顔はどこまでも人を惹きつける。
自分とは真逆のようで、眩しいくらい。
「今日もありがとう。
あ、レオもう一つだけお願い。」
座学用の資料や本、ペンをまとめながらリアは自分を見る。
「レオは働きすぎなのと、みんなのこと優先し過ぎ。ちゃんと休んでね。」
立ち上がり、射貫くような真剣な瞳。
このまま見つめていると自分が自分じゃいられなくなるような気さえする。
「そんなことないよ。ちゃんと休んでるし気晴らしもしてるよ。」
かわすようにまた眼鏡をかける。
その瞳の真っすぐさは毒だ。