第3章 《ルイ》 はじめて
「リアを好きになって、リアと一緒に居ると決めた時から俺は覚悟しているんだよ。
王宮の人々だけでなく国民にも、誰からも愛されるプリンセスを手に入れられる重みは半端なものじゃない。
だけど、リアが俺を好きでいてくれる限り俺は君を誰にも譲る気はないんだ。」
この涙を拭うのも何時だって俺がいい。
そっとその泉のように湧く涙の目元にキスが降る。
「ありがとう。」
その花のような可憐で美しい笑顔。
この笑顔が自分に向けられるときの幸福感は何に例えられるんだろう。
笑顔一つでこんなに幸せな気持ちになれるのもはじめて。
「うん。だから、誰の手を取っても君を信じている。
そして最後に俺の手をとって。
一緒にワルツを踊ろう。」
リアの小さな手を取りキスを落とす。
「はい。」
頬を赤らめまた微笑むリア。
この笑顔を守るためならなんだってできる気がする。
君の為なら俺は強くなれる気がするよ。
穏やかな春の陽気
憂うものなんてなにもない。
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今夜も月が美しい。
城の中は今宵の舞踏会のため王宮の人々が忙しなく動き回り
それぞれの持ち場で務めをする。
王宮には続々と参加者が到着しはじめ賑やかだ。
「わー、リア様とっても綺麗!」
ほぼ支度を終えたリアのもとに執事のユーリが紅茶をもってやってきた。
今夜の為に仕立てられたドレスに身を包んだリアはとても美しくユーリから感嘆の声が漏れる。
淡いブルーのAラインのドレスはスカート部分がシフォンとなり、
オフショルダーの袖とそれに胸元も柔らかなシフォンが使われ控え目ながら蝶や花の刺繍が施されていた。
シンプルな作りながらも丁寧な仕事であるそのドレスは品の良さや彼女の持つ美しさを存分に引き立てていた。
他の装飾はゆるく巻いた髪を片側に寄せて留めている青いバラと小さな白い花の髪留めだけだ。
「シンデレラみたいだね、リア様。」
「そんなに褒められたらなにかお返ししなくちゃいけないね。」
ふふと微笑むその様はまるで女神や妖精のようだ。
「はは、ルイ様今日は大変だな~」
思わずルイの心配をしてしまうユーリだった。