第3章 《ルイ》 はじめて
「うん、リアがなんか困っているんじゃないかって思って。」
蒼の双眸がリアをまっすぐ捉えその問いに応える。
「私が?」
まだその応えの真意が見えないリア。
「そう、これのせいで。」
懐から取り出されたのは舞踏会の招待状。
それが目に入った瞬間リアは凍り付いたように固まる。
「そ、それは…。」
「うん、俺のところにも来た。」
「っ…ルイ、ごめんなさい!私っ…」
今にも泣きだしそうなリアは触れたら壊れそうな脆いガラス細工のようだ。
そっと、壊れないように優しくその頬に触れる。
「君がこれのせいで思い悩んでいるんじゃないかと思って来た。
君のことだから俺への負い目を感じているんじゃないかって。
俺もこれは知らなかったけどリアも知らなかったんでしょ?」
心の奥の不安をそっと包むかのような優しい声音でリアに語り掛ける。
リアの目元は潤んでいる。
やっぱり、思った通りだ。
優しい彼女のことだからきっと自分への罪悪感で苦しんでいるだろうと思った。
そう思うと彼女のもとへ自然と足が向っていた。
「うん…私も全然知らなくて、でも知ってからも、わ、私止められなくてっ…
ルイを傷つけちゃうかとか、呆れられたらどうしようって…」
今にも泣きだしそうなのを必死に堪え自分への罪悪感を語るリアがたまらなく愛おしい。
「リアは何も悪くないじゃないか。
君の立場をわかっているつもりだよ、俺は。
リアが思い悩むことじゃない。」
潤んだ愛しい人の瞳に映る自分はきっとらしくない顔をしている。
誰かをこんなにも愛おしく大事にしたいと思うのははじめて。
愛する者が苦しんでいると思うと自然と身体が動いてしまということもはじめて知った。
「ルイ…」
その瞳の堤防を越えた涙が一筋流れ頬に添えた手をつたう。
温かい涙だ。
そっとその滴を拭う。