第2章 《レオ B.D》 その名前
自室の前で小さな箱を持って立っていたリア。
自分を見つけるなり彼女はその花のような笑顔で駆け寄ってきた。
「リアちゃん、どうしたの?なんか相談でもあるの?」
彼女の訪問理由がまったく見当がつかなかった。
「ううん、そうじゃないんだけど…」
少し恥ずかし気に言い淀んだかと思うとすぐその様子は消え次の言葉が紡がれた。
「これを渡したかったの、はい!」
差し出される小さな箱。
ほんのり甘い香りがする。
「え、どうしたのこれ?」
突然のプレゼントに驚きが隠せない。
だって、誕生日は教えていない。アランも、俺も…
「最近レオとても忙しそうで心配で。
あと、さっきなんかレオの顔がさみしそうっていうか悲しそうに見えたから。。。
疲れには甘いものだよ!
それと、私は役に立てないかもだけど私にできることあったら何でも言ってね!」
先程の瞼に焼き付いた心配の色をした笑顔がまたそこにあった。
甘い香りとその笑顔に何故か泣きそうになった。
箱を開けるとその甘い香りの正体のイチゴのタルト。
「お誕生日おめでとう、レオ。
私はレオがいて本当に良かった。
いつも、ありがとう。」
夕日に染められたその笑顔は今まで見た彼女の笑顔で一番美しく、胸についた小さな火を燃え上がらせる。
鼻の奥がツンと痛んだ。
その美しい笑顔を閉じ込めたくて、今余裕のない自分の顔を見られたくなくて
空いた片手で抱き寄せた。
「ちょっ、れ、レオ?」
突然のことに焦ったリアが胸の中で声を上げる。
「…ありがとう。」
彼女の美しい髪から優しくほのかに甘い彼女の香り。
触れる肌は柔らかくて温かい。
今この瞬間だけは彼女を自分のものにしたかった。
「うん。これからもよろしくね。」
リアの優しい声音が自分の胸に直接語るかのように紡がれる。
時が止まればよいのになんて子供じみたこと考えた。