第2章 《レオ B.D》 その名前
その笑顔が曇る前に離れ、改めて感謝をして自室へ戻る。
ベッドに倒れこみ、大きくため息をして体の熱を逃がす。
胸についた小さな火はあっという間に全身を焼いた。
「今年の誕生日は随分甘いな…」
視線の先にはイチゴサンドとイチゴタルト。
それはきっと幸せの味。
その気持ちに名前を付けたらきっと自分は自分でいられなくなる。
いつだって他人を想い、心のままに動く彼女。
こんな俺も心から心配してくれる。
彼女は毒だ。
今まで生まれなかった欲が次々出てきてしまう。
カサ…
何かが落ちた音がした。
音の方へ視線を向けると綺麗な字で一言だけ書かれたカードが目に入る。
『レオの分までレオのこと大切にするね。』
この気持ちに名前を付けたらきっと俺は戻れなくなる。
タルトのイチゴを一つつまみ口に運ぶ。
なんて甘いんだ。
この気持ちに名前はまだない。
fin.