『ハイキュー!!』近くで想う…黒尾鉄朗or夜久衛輔
第16章 だから、いいんだ、このままで
バレンタイン当日
甘い香りが学校中を包んだ
お世話になった人に
ブラウニーを渡す
勿論、男子バレー部の後輩達へ
手渡すと号泣されたのは驚きだ
夜久くんが私に声を掛けて来た
私は彼にそっと手渡す
受け取ってくれた彼は私を見ていた
「これって義理だよな」
「ご、ごめんなさい…」
「いや、そうじゃねぇよ…黒尾に伝える決心はついたのか」
「!?な、ないない!絶対にないから…」
望んではいけない物語
関係が壊れる事はしたくない
苦笑いする私に夜久くんは
私の頬を横に伸ばした
痛い、地味に痛い
嫌がる私に夜久くんは
冷ややかな視線を向けつつ
止めてくれた、頬を擦る
「素直に気持ちを伝えないで本当に幸せになれると思ってんのか」
「!…だって私は脇役だし」
「脇役ってなんだよ、意味分かんねぇ…うじうじしたって仕方ないだろ?当たって砕けろ、先ずはそこが大事なんだよ」
「砕けたら私失恋するのでは…?」
「その時は俺がお前を慰めて貰ってやるよ…」
そう夜久くんは私にいう
なんでこんなにもいい人を
私は好きになれないのだろうか
恋愛感情として夜久くんを
好きになれたらきっと
私は幸せ者だろうと思えた
ーーー…
夜久くんが今日の放課後に
黒尾くんを教室に呼び出す
そこで渡せと私に説明する
上手く行くかは私次第だ…
告白は出来ないけれど
気持ちを渡す事は出来る
だろうと思いたい
緊張する気持ちを抑えて
放課後になるのを
まだかまだかと
授業を受けながら私は待った
ーーー…
大丈夫、大丈夫…
ブラウニーとマカロンを
渡すだけなんだから
なんでこんなに緊張するんだろう
夜久くんが変な事をいうから
友達には渡したし
後は隠れた本命を手渡すだけ…
上手く行く、大丈夫…
そう教室のドアを開けようとしたら
中で声が聞こえた
「ねぇ、鉄朗…私ね…やっぱり貴方が好きなの!諦め切れない!」
目の前で盗み聞きをする
つもりは私にはなかった
そしてユカが黒尾くんに
抱き着く姿なんて
誰が想像出来ただろう…
私は今すぐにでも教室から離れたくて
手に持つブラウニーの箱はぐしゃりと
形を変えてしまい渡せなくなってしまった
「やっぱり…脇役だから私はヒロインになれない」
分かっていた事なのに
一人浮かれて馬鹿見たい
形を変えたブラウニーを
私は捨ててしまった
『だから、いいんだ、このままで』