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『ハイキュー!!』近くで想う…黒尾鉄朗or夜久衛輔

第15章 恋の歌に共感なんて馬鹿げているけれど


周りから私と貴方は
どう見えているのだろう
これでも私の片想いなんです
大切な友人なだけであって
付き合っていないんですよ
なんてそう周りに声を出して
伝えてしまったら私の気持ちや
恋心は少しでも楽になれるかな
私と貴方は友達であり
それ以上の関係は望んではいけない…

ーーー…

最近人気になった恋愛の歌詞を
サラサラと手帳に書いて見た。
私の今の心境と同じだとため息をつく
明日はバレンタインデー
全ての友達に義理を渡すつもりだ
その時黒尾くんの顔が思い浮かぶ
いやいや、駄目だ…彼が私に望むのは
あくまで『友人』であってそれ以上は
きっと望んでいないだろう
自分で分かってはいるが
改めて考えるとショックを受ける

ーーー…

ブラウニーを作ろうかと思い
今日の放課後買い物をしようと
正門から出て行く時
私の名前をいい呼び止められた
懐かしい声、久しぶりに聞いた
全く口を聞いて来なかった
ユカがいたのだ

「本当、おめでたい頭ね…鉄朗は誰に対しても優しいわよ、だから少し優しくされたからって勘違いしないでくれない?鉄朗は私のモノよ、絶対にアンタなんかに渡さない…」
「ユカ…私は…」
「なんで…なんでアンタ見たいな平凡の女が、上手く行ってるのよ!」

ヒステリーに怒る彼女を見る
しかしそう言われても浮気した
貴女に非があるのでは…
なんて私は言えず逃げるように
学校を出て行った
もう彼女と仲良くなんて事は
出来ないだろう
見る影もなくなってしまった

ーーー…

義理を作ろうと思ったが
つい本命のチョコレートを
手に取ってしまっていた
気付きはしないだろうと
そんな思いを感じつつ
明日に間に合わせるように
ブラウニーを作り始めた

義理はブラウニーだけ
本命はマカロンを添えて置く
マカロンの意味は『大切な人』
きっと気付かないと思いながらも
どこか本音は気付いてくれたら
いいのに…そう思ってしまう

手元にあった手帳を見下ろす
歌詞の書いてある文字を指先で
なぞり大きくため息をついた

「私と貴方は友達であり…それ以上の関係は望んではいけない」

そう自分に言い聞かせながら
大丈夫だ、今回もきっとなにもなく
イベントは終わるはずだからと頷いた

緊張せずに渡せるだろうか
告白なんて出来ないけれど
これが私の精一杯の気持ちだから

『恋の歌に共感なんて馬鹿げているけれど』
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