『ハイキュー!!』近くで想う…黒尾鉄朗or夜久衛輔
第14章 ごめんね、ほんとの私は『友達』じゃない
帰り道、黒尾くんは言った
気になる人が出来たのだと
貴方は私をどれだけ
傷付けたら気が済むのだろうか
そう口には出さない
告白はしていないし
言う権利すらないのだから…
そう思いつつ私は笑って尋ねて見る
「えっと…ちなみに誰とか」
「あぁー…うん、ごめん。それは教えられない」
「それじゃあどうやって協力しろと…」
「確かになー…」
曖昧過ぎる黒尾くんの言葉に
どうしようか悩む
けれど貴方の口からまた
好きな人の惚気話などを
聞きたくはなくて
私は無理にでも話しを反らした
ーーー…
「あ、これ可愛い…」
「そう言えば朝倉さんって黒猫好きだとか言ってたよな」
2匹の黒猫が仲良さげに寄り添った
キーホルダーを手に取って見た
可愛い、欲しい…
じっと見つめている私に黒尾くんは
私から奪うように持って行く
「ちょ、黒尾くん!?」
「これ朝倉さんにプレゼント…」
「待って、そう言うのいいから!」
「色々とお礼してなかったから…今させろよ」
「お礼とか私なにも…」
私がそう言うと黒尾くんは
口を開いて教えてくれる
精神的に辛かった時
私が傍にいて話を聞いて
くれた事が嬉しかったそうだ
そんなの当たり前じゃないか
だって、好きな人が傷付いて
放っておける程、私は冷たい
人間じゃない…そんな事
言える訳がないんだけれど
結局会計を済ましてしまった
私の手のひらにキラリと光る
猫のお洒落なキーホルダー
嬉しいけれど…この意味を
考えるに少しばかり心が重くなる
「そう言えば女友達に買ったの初めてかもな…」
「ふふっ…ありがとう、大切にするね」
ぽつりと呟いた言葉は私の耳に届いた
黒尾くんの言葉で私は友達なのだと
思い知らせる、けれど私は笑って
ありがとうと言った。私が初めて
女友達で…私が。その言葉だけで
また心が救われてしまう
私はなんて単純なのだろうか
ーーー…
少し寄り道して電車に乗った
人は空いていて座席に座る
隣りに黒尾くんも腰掛けた
なにも発しない、それが妙に
気まづく思えた私は
鞄から小説を取り出すと読む
けれど頭にはなにも入って来ず
隣りに彼がいるのが夢見たい
そんな時肩に違和感が
黒尾くんが私の肩に寄り掛かって来た
これは起こした方が良いだろうか
あぁ…後もう少し夢を見させて下さい
『ごめんね、ほんとの私は『友達』じゃない』