『ハイキュー!!』近くで想う…黒尾鉄朗or夜久衛輔
第12章 ああ、ほらまた好きな理由がひとつ増えた
結局それが決め手となり
別れるという話になったようだ
しかしユカは諦め切れないのか
荒れていた理由も分かった
私に対しての機嫌の悪さも含めて
貴方に触れるつもりはない
そんな勇気、私にはないから
ただ貴方が少しでも心が軽くなる
というのなら私は貴方の聞き手に
なります。だからそんなに悲しそうな
顔をしないで…
そう本当は抱き締めて
背中を擦ってあげたかった
私の手のひらをぐっと握り締めて
黒尾くんの言葉を
頷くように聞いていた
「なんでかな…朝倉さんに相談とか乗って貰ったら、気持ちの整理がついて心が軽くなる」
「黒尾くん…」
「朝倉さんに話て良かった、他に誰にも相談出来なくてさ…本当優しいよな」
「私、貴方が思ってる程…優しくないよ」
優しくなんてない
今でもまだ黒尾くんが好き
駄目だ、少しだけ貴方が私を
頼ってくれて嬉しいとか
このまま別れてしまえばいいのに
なんて最低な事を思ってしまう
ユカが私を怒る理由も間違い
じゃない、私も黒尾くんが好き
その想いはやはり譲れない
「バレーに集中したいから、もう彼女とかはいいかな…」
「わ、別れる…の?」
「うん、もう恋人とかこりごりだわー…」
貴方の口から聞いて
喜んでいけないのに
喜んでしまう自分がいる
汚い、こんな自分が嫌で
最低だと思えてしまう
ーーー…
ユカと別れたという話は
直ぐに周りへ知れ渡った
しかし優しい黒尾くんは
ユカの浮気が原因だと
言わなかったのだ
気持ちのすれ違いだと
苦笑いで伝えている
その表情を見ていると
貴方の顔は辛そうで…
けれど私は嬉しくて…
あぁ…本当にごめんなさい
私はなんて最低なんだろうと
黒尾くんやユカに顔を背けた
ユカは私を酷く目の敵にしていて
友達なんてこんな簡単に崩れるもの
だったなんてとため息をついてしまう
黒尾くんは私と話す事が増えた
貴方の口からはバレーや後輩の事を
話してくれる。昼食の時に後輩の子と
話た事がある為、楽しげに話す貴方の
顔を見つめてうんうんと頷き
話を聞いていた。
「朝倉さんって聞き上手とか言われない?」
「どうだろう」
「俺の話、面白くないだろ」
「そう?私は黒尾くんの話聞くの楽しいけど…」
「!…あぁうん、俺も朝倉さんと話したりするの好きだわ」
『ああ、ほらまた好きな理由がひとつ増えた』