『ハイキュー!!』近くで想う…黒尾鉄朗or夜久衛輔
第11章 こんな想いは消してしまいたい
空気が重い
誰が悪い訳じゃない
「ごめん、夜久くん…黒尾くんと話をさせて」
「!…良いのかよ」
「うん、遅かれ早かれ言うつもりだったから」
大丈夫、親しくなかった時に
元通りになるだけだから
黒尾くんにはユカがいる
ユカには黒尾くんがいる
だから伝えてしまおう
「黒尾くん。私と距離をおいて下さい」
「はっ?」
「正直に言えば、最近ね?黒尾くんとの距離感が近いなって思えたの…私は男性に対して余り免疫とかないし。ぐいぐい来られるとこっちからすれば迷惑というか、つまり嫌なんだよね…」
「なんだよ、それ…」
「これ以上、黒尾くんの事…嫌いになりたくないから、元に戻ろう。親しくなかったあの頃に…」
「そんな事、今更出来る訳…」
「出来ないんじゃない!するんだよ!」
ユカを想うならそうしてよ
お願いだから…それなのに
どうして貴方は酷く傷付いた顔を
私の目の前でするのだろうか
結局、私が悪いの?どうしたらいいの…
もうなにもかもが、分からないよ
ーーー…
気まずい雰囲気のまま
支度をして帰る
ユカを送る黒尾くんの姿を見た
パチリと黒尾くんと視線が合う
私はサッと顔を背けた
「朝倉は危なっかしいから俺が送ってやる」
「夜久くん…」
「バスに乗り遅れるし急げよ」
「えっ、あの…」
そう言えば、あの時も私の手を引いて
助け出してくれた事を思い出した
あぁ…夜久くんが好きだったら
誰も傷付けずに済んだのだろうか
私の手首を掴みながら走る私達
息切れの私を笑いながら
夜久くんは優しく背中を擦ってくれて
その優しさに罪悪感を感じた。
「朝倉、ここ開いてる…座れよ」
「でも…」
「そう言うのいいから。少しはカッコつけさせろよ…俺は運動部員だしさ」
「ふふっ…そうだね。それじゃあ…遠慮なく」
一人しか座れない座席に腰掛ける
私の横で、立ちながら私を見下ろした
「鞄重くない?持とうか?」
「いや、大丈夫」
「そっか、あの…本当にごめんね」
「それはどれに対して?」
「今日あった色々に対して…私のために怒ってくれたんでしょう?」
「それもあるけど、なんか嫉妬した…応援するとか自分で言っておきながらさ」
謝る夜久くんに私は首を左右にふる
事しか出来なかった
夜久くんを好きになれたら
こんな想いをしなくて済んだと言うのに…
『こんな想いは消してしまいたい』