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『ハイキュー!!』近くで想う…黒尾鉄朗or夜久衛輔

第10章 どうして他の人では駄目なのだろう


指先にテーピングされた次の日
ユカは私を見て言った

「四葉…鉄朗と距離、近くない?」
「えっ…」
「ごめん、こう言うの言いたくなかったんだけど…最近ね。鉄朗が私より四葉と仲良さげに見えたから」
「分かった、それなら余り近付かないようにするよ…距離もおくから。ごめんね」
「違うの!ごめん、私四葉の事…本当に大好きだし。でも…本当にごめんっ」

ユカはやっぱりヒロインだ
私の前で泣きながら
面と向かって伝えてくれる
さながら私はユカを傷付ける悪役だろう
心が重い、私も人前で泣けたらいいのに

ーーー…

ユカに私の彼氏を取らないで
という指摘を受けて距離をおく事を決めた
何度か黒尾くんに話し掛けられても
なんらかの理由を付けて私は去った
悪く思っているだろうと思う
けれどこれはユカの為、そして私の為だ
これ以上好きにならないように

「朝倉、今いいか?」
「夜久くん、どうしたの」

とても私を気にかけてくれる友人
突き指はどうだと言われて私は苦笑い
しっかり巻かれた指は酷くなって
おらず、寧ろ痛みは減ったと言った

「朝倉ってしっかりしてそうで、妙に抜けてるっていうか案外鈍臭いよな…」
「それは、私も自覚してる…」
「あ、後は恋愛下手…」
「それは言わないで下さい」

それも知ってますとも
好きになる人は大体他に
好きな人がいたりするものだ
最初から負け試合です
分かります。それでも
なんで黒尾くんだけ
ここまでこだわってしまうのか
私にも分かり兼ねた。
理由なんてない、ただ好きだという
この想いは間違いなく本物だった

「俺、応援するから…」
「えっ…」
「略奪とか考えないの?」
「両方を傷付けてまで欲しいとは思えないよ…」
「素直になれよ、あいつが欲しいなら力づくでも奪い取れ。それが無理なら…俺にしろよ」
「えっ…」

応援はする、無理なら俺にしろ
そう夜久くんは言った
待って、分からない…
気持ちが全く追い付いていない

「さっきのは…」
「失恋して傷付いている心に付け入るなんて悪いとは思ってる、でも諦めが悪いっていうのは良いと思う…俺もそうだし」
「えっと…」
「朝倉が好きだ…ずっと見て来たからお前がどれくらい黒尾の事が好きだって知ってる、だから俺も諦めない…」

『どうして他の人では駄目なのだろう』
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