『ハイキュー!!』近くで想う…黒尾鉄朗or夜久衛輔
第9章 神様がいるなら、どうか今だけ
今お昼だから先生は席を外していた
私は薬を貰いながら冷凍庫から出して
氷袋を作った。ピタッと指先に押し当てる
冷たくて気持ちいいなとほっこりする
廊下から足音が聞こえた為
先生が帰って来たのかと振り返ると
そこに立っていたのは夜久くんだった
走って来たのか息が荒い
「えっと…夜久くんもどこか怪我したの?」
「そんな訳ないだろうが…で、怪我は?」
「突き指だけど」
「そんな事知ってる、黒尾から聞いた。俺が言いたいのは見せろって言ってんだよ」
「えぇ!いや、でも…そこまで酷い訳じゃないし」
「お前、本当に可愛くない…素直に指先が痛いから見て欲しいとか頼めよ」
ほら、早くしろって…
そう夜久くんがいう
男性に甘えた事がない私は
戸惑うもそっと指先を差し出した。
夜久くんに指先を見せて
氷袋を押し当てられる
少し赤く腫れている私の指先
静かな空間が私と夜久くんを包んだ
「気付かなくて悪い」
「いやいや、私は誰にも言ってないし…ただ黒尾くんが気付いてくれて」
「なぁ、なんでそこまで…あいつの事、好きなの?」
「分からない。いつの間にか好きになってたから…やっぱり、好きになる理由とかいるのかな?」
「…いらないな」
好きになる理由なんて人それぞれだもの
だから私はやっぱり諦め切れなかった
テーピングをして貰おうと思ったら
テープがないという話しになった
持って来るから待ってろと言う事で
私は夜久くんの背中を見て
指先を氷袋で冷やした
五分程経って中々帰って来ないなと思った
そろそろ戻って来る時間…
そう思い時計を見上げて見る
ガラッとドアが開いたから夜久くんかな
と振り返れば目を疑った
「く、くろお…くん?」
「悪い、待たせた」
「いや、あの…夜久くんは?」
「夜久に頼まれたんだけど、聞いてない?」
「いや全く…」
「あれ?夜久からテーピング持って朝倉さんの所に行けって言われたんだけど…さもないと蹴り入れるぞって脅しもいれられて。まぁいいや…指先巻かせてくれるか?」
なんで、夜久くん…わざと?
そんなサプライズは私、望んでいない
ゴツゴツとした指が私の手を
優しく触れた黒尾くんは
ゆっくりと丁寧に巻いてくれる
指先が熱い、指は長くゴツゴツしていて
男性らしい手の甲がセクシーだ
真剣な眼差しで私の手を処置してくれる
『神様がいるなら、どうか今だけ』