• テキストサイズ

君と私と(非)日常

第18章 ポートレイトに愛惜を塗る


「バッカねぇー、そんなのやられたフリに決まってんでしょ。このまま最後まで何もせずに見守って終わるのも絶望的だなーって思ってね。飽きるまでは息を潜めることにしてたのよ」
『そ……それで何のために出てきたの?……何を企んでるの?。』
ベッドシーツを心持ち盾のように構えながら問いかける。
「久し振りに会った元クラスメイトに対して随分冷たいですね……せっかく悩めるあなたの力になってやろうと思って出てきたのに………悲しい限りです」
頭からキノコを生やしてどんよりと肩を落とす盾子ちゃん。
「日向創の人格をカムクライズルのままにしておきたいんでしょう……? 手を貸してあげられますけど……どうします……?」
『イズルくんの人格をそのままに……?。』
シーツを手放して身を乗り出した。
『どうやって……?。』
「そんなの決まってるじゃない! このプログラムから卒業すれば現実世界のカムクライズルは永遠に日向創になるのよ! だったら……卒業させずにプログラム世界から出すしかないじゃない」
盾子ちゃんはこちらに歩いてきて、顔をズイッと寄せた。それにおののいて壁に背が当たる。
「私様がアドバイスしてあげる……アンタはそれに従って動けばいいわ。大丈夫、パーフェクトなヒューマニズムで絶対勝者にしてあげるから」
『そんなことしたら……この計画は失敗に終わっちゃうよ。苗木くんや響子ちゃんのみんな……それに万が一絶望の残党が更正しないまま世に出ちゃったら、今度こそ本当に全世界が壊されちゃう……。』
盾子ちゃんの提案にたじろぐも、顎をガッと掴まれ顔を固定される。
『ひぇ……っ。』
ギラギラとした盾子ちゃんの目が限界ギリギリまで私の顔に近付けられた。
鼻先がぶつかって、思わず怯えの声が洩れる。
「忘れているのだから恐がるのも仕方がないですね。特別に私様の力であなたの記憶を一部取り戻させてあげましょう」
スッと眼鏡をかけた盾子ちゃんは私の目の前で手を叩いて大きな音を鳴らした。所謂猫だましみたいなものだ。
突然のことに驚いて肩を弾ませた瞬間、頭に何かの記憶がフラッシュバックした。

――もうこうなったらやるしかない
――私がプログラムの世界に入って、イズルくんの更正を阻止するんだ
――たとえ他の子がどうなってもいい
――他の被験者のアバターが壊れようとも……私はイズルくんをイズルくんのままで外に戻さないと

/ 203ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp