• テキストサイズ

君と私と(非)日常

第18章 ポートレイトに愛惜を塗る


『…………!?。』
何だろう、今の記憶は。
私は、こんなことを考えてプログラムに参加したの……?。
計画を台無しにするために……?。
そんな馬鹿な……。
そんな…………。
「カムクラに関する記憶は全部消されちゃったのよねぇ? だからこの思惑を忘れちゃうのも必然だったのよ」
『……本当に?。』
いや、でもだって、今更こんなこと思い出したってそんなこと出来ないよ。
皆が危険な目に遭うのは勿論、日向くんだって確かに大事な仲間なんだ。
イズルくんが消えちゃうのは嫌だけど、私は誰1人欠けさせたくない。
「ワガママねぇ、どっちか1つでしかダメなの。覚悟を決めなさい。それで……カムクライズルをあなた自身の手で救うのよ」
盾子ちゃんが私の耳元でそう囁いた。
その声を聴いて、脳味噌がパチパチと音を立てたような気分になる。
『………そう、そうだね。』
私は世界の復興より、絶望の残党の殲滅より、輝ける希望に満ち溢れた未来より………カムクライズルとの逃亡を望んでいるのだ。
この先イズルくん以外の誰がどうなろうが関係ない。
被験者が、生き残りの同級生が、未来機関のメンバーが、この世界の全人類がどうなろうが……私には絶望的にどうでもいい。
『うん、決めたよ。イズルくんを助ける為なら、何を犠牲にしてでもやり遂げるよ。』
「うふふ……今のアンタの顔、超が付くほど素敵よ。目のなかでグルグル絶望が渦巻いててすっごく魅力的だわ……!」
また頭の中でパチッと音がした。
微かに思考を否定するような感情が芽生えたけれど、そんなものはすぐに溶かされ消えてしまったみたいだ。
『う……うぷぷ………うぷぷぷぷぷぷぷ………!。』
何故か流れ始めた涙をそのままに、モノクマのように笑う。
涙で霞んだ視界には、ただ満足気に微笑む江ノ島盾子の姿だけが写っていた。


――うぷぷ……偽物の記憶を頭に放り込んで、ちょっと私様の思想をウイルスとしてアバターに捻り込んだだけなのに、簡単に洗脳出来ちゃうなんてね
………まぁ、コイツもただカムクラを助けたい気持ちを行動に移す為の後押しが欲しかっただけなのかもしれないわね
……これで私様がこのプログラムから外の世界に羽ばたくための準備が出来そうだわ
希望に満ち溢れた未来なんて絶望的だもの
もっと破壊的で残酷で無慈悲な世界が見たいのよ
もっともっと絶望に染め上げられた未来でなくちゃならないわ
/ 203ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp