• テキストサイズ

君と私と(非)日常

第18章 ポートレイトに愛惜を塗る



真昼ちゃんに写真をもらった。

日向くんが写った写真をたった1枚。
なるべく無表情に近いやつ。真昼ちゃんの撮る写真は笑顔が多いもんな。
自分のコテージに着くなり、私は油性マジックを取り出して写真にキュッキュと手を加えた。
『…………できた。』
写真の中の日向くんの髪はこれでもかと伸び、瞳は丁寧に真っ赤な色のペンで塗り潰されている。
『ふふ……イズルくんの完成。』
青空と砂浜をバックに半袖の白シャツと緑のネクタイで佇むイズルくんらしき人物は、私の記憶の中にあるあの人と比べたらかなりシュールなものだった。
それを、用意した写真立ての中に飾り、静かに枕元に置く。
ベッドに寝そべり、イズルくんもどきの写真を見つめた。
『……イズルくん、会いたいなぁ。』
大好き。大好きな人。
結局イズルくんには自分の気持ちを伝えられないままだったなぁ……。
この修学旅行が終わる頃には「イズルくん」はきっと「日向くん」になっている。
それで元通り。
それが元通り………。
『……もう、会えないのかなぁ。』
枕に頭を埋めて、溜め息を吐いた。
本当は最初の時点で分かってたのに。
プログラム世界に入る前にちゃんと説明を受けて、最終的にどうなるのか知った上で参加したのに。
私はいまだにイズルくんのいない世界を決心した記憶を思い出せていない。
だからまだ私は恋しがってばっかりで、今もこうしてあの人の名残を味わっている。
わざわざ記憶を消してプログラムの中に送ってくれたみたいだけど、立て続けに見た夢が原因で思い出してしまった。
このまま計画通りに進めるのが正しいはずだけど、本当にそれでいいのかな……もっと他にやり方があるはずなんじゃ……。
……いや、本来の計画に背くわけにはいかない。
失敗したら私だけじゃなく、他の皆も責任を負うことになる。
ただでさえ今は未来機関の命令に逆らって行動している最中なんだから、私1人の事情で計画を台無しにしちゃダメなんだ。

「アンタ相変わらず真面目ねー。そんなんだから幸せになれないのよ」

部屋の中から声がした。
どうして。部屋の中には誰も居ないはずなのに。
驚いて起き上がって見ると、1人の女の子がドアにもたれ掛かるように立っていた。
『江ノ島……盾子ちゃん?。』
なんで?。モノクマはモノミにやられてから今まで全く姿を見せなかったのに。
/ 203ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp