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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


そういえば砂浜でカムクラから訊かれていたことに答えていなかった。『私のこと好きになったら教えて』とちゃんと伝えなければ。
『いずるくん……。』
眠気で回らない呂律を気にもせず希灯は言葉を続けた。
『私のこと、好きに……なって………。』
そんな希灯の寝惚けた声に、カムクラは少しだけ振り返るように首を動かす。直後、また眠ってしまったのか深い息遣いが聴こえた。
「……考えておきます」
おそらく先程の質問への答えを言い間違えてしまったんだろう。
そう察したものの、カムクラは聞こえた通りの言葉に返事をした。
誰もいない夜道を一塊の2人が、遠くに見えるホテルの灯りを目指してゆっくりと帰っていく。
まだ希灯の心のわだかまりが完全に解消されたわけではないけれど、いくらかマシにはなっただろう。何日も距離を置くような態度でいた希灯を思い返しながらカムクラが軽く分析する。
明日以降の希灯の行動を予想しようとすると、なぜだか自分と一緒にいる姿が優先的に思い浮かんだ。
これは予想ではなく願望ではないだろうか、と一瞬疑うも超高校級の希望として才能の精度が下がってしまったような気がして再度考え直す。
1人で過ごす。モノケモノを倒して回る。他の人と過ごす。自分に会いにくる。自分と共に過ごす。
「…………」
別に希灯がどう過ごそうと関係ないけれど、どうにも自身と一緒に居るところを多く想像してしまう。分析の結果だろうか。仲直りのようなことになったんだから自分の所に来る可能性は高いはずだ。
しかしカムクラは自分自身を納得させるには至らなかった。
「やっぱり、感情なんて要りません……」
才能が霞む気配を感じ、溜め息混じりにカムクラは独り言ちる。
カムクラの背中では、すっかり夢の中にいる希灯がただ穏やかに寝息を立てていた。









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