• テキストサイズ

君と私と(非)日常

第17章 君と私と愛の鍵②


髪の毛も束がしっかりしてて、普通の人間に比べたらゴワゴワでちょっと硬かった。
頭をわしわしと撫でていると、キーボくんは更にギュッと私を抱き締めた。
「……誉稀さん。さっきのあなたの言葉はとても嬉しいものなんですが、僕はやっぱり人間になりたいです」
『どうして……?。』
撫でる手を止めて抱き締め合ったままの状態で会話を続ける。
「本来ならここであなたとどうなるべきか……計算で答えは出てるんです。でも、僕は人間じゃないからそれが出来ない……人間としてのやり方であなたを喜ばせることが出来ない……。悔しい限りです」
ホテルのベッドでお互いを好き合う若い男女が2人。
キーボくんにはアレが付いてないから、理解は出来ても実行はできないね。
遺伝子を残せる身体じゃないし排泄も必要ないから仕方がない。
「たとえ本物の人間になれなくても……せめて真似事だけでも出来ればいいのに。そしたら僕はあなたに言葉だけじゃない気持ちが伝えられるのに……」
『…………。』
私はキーボくんの肩を掴み引き離す。
そしてキーボくんに顔を近づけ、唇を重ね合わせた。
「……! 誉稀さ……」
やっぱり口も硬くて冷たいが、そんな風にはまるで見えない程キーボくんの顔は真っ赤になっていた。
『もう少し踏み入った事はまだ出来ないけどさぁ、真似事だとしてもこれならちゃんと伝わるよ。』
「そ、そうですね。この手がありました……映画なんかでも、キスは感動的なシーンによく使われますもんね」
照れながらキーボくんが納得したように頷く。
「……あ、雨止んだみたいですね。そろそろ出ますか………?」
焦った様子でやけに大袈裟に辺りをキョロキョロ見渡す。どうやら照れ隠しのようだ。
『うん、早めに止んで良かったね。飯田橋博士の所に向かおうか。』
立ち上がろうとすると、キーボくんが手を掴んでそれを止めた。
「………」
『どうしたの?。』
「さ……最後にもう1回だけいいですか? 今度は僕からやらせてください」
キーボくんが恥ずかしそうに手をギュッと握りしめる。
『うん、いいよ。』
目を閉じてキーボくんを待ち構えた。
/ 203ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp