第17章 君と私と愛の鍵②
少しの間の後、また唇に冷たいものが当たる。
あぁ、これこそがキーボくんなのだ。
人肌ではないからこその彼の体温が、今はとても愛しい。すごく幸せな気分だ。
「もう少しだけ……」
『あとちょっとだけね。』
「まだ……まだまだし足りないです」
そんなこんなで、部屋を出たのは雨が止んでから数十分経った後だった。
『…………。』
翌朝目が覚めると、妙に唇がパサついているのを感じた。
はて、昨夜は何があったんだろうか……。
愛の鍵を使って、それからは……?。
…………………。
結局何も収穫なしか。
昨日の夜のことはほとんど思い出せないし、その前の愛の鍵を使った時のことも何も分からない。
そもそも一番最初の出来事が昨日の内に何か分かっても、朝には忘れてしまうのだから何も変わらない。
気にしても仕方のないことだったんだろうか……。
私は溜め息を吐いて、何となく唇の感触を寂しく思いながら身支度をし、食堂へ向かった。