第17章 君と私と愛の鍵②
「……ドライヤーの機能もありますが、今は弱い風力しか出ないので冷たく感じてしまうでしょうし………そうだ! ボクの内部はちょっと暖かいはずです、手を入れてみてください」
キーボくんはさっそく装甲の一部の蓋を開け、私の手を掴んで当ててきた。
「どうですか? 少しは暖かくなりますか?」
パソコンを酷使した時みたいな熱が手に伝わる。
じんわりと広がり、私の体に少しずつ移っていった。
『ありがとう。……でもキーボくんは大丈夫?。嫌だったら無理しないでね。』
「ボクは大丈夫です! 寧ろ手しか暖められなくてすみません。今度博士に装甲が発熱する機能を付けてもらいましょうか……ついでに装甲はとても硬いのでソフトビニール素材に変更してもらいましょう」
これならあなたを全身で暖めることができますね、とキーボくんは楽しげに語る。
『そうだねぇ。身体中が暖かかったら、お互いの身体をくっ付け合って暖を取れるものね。』
片手を離し、キーボくんの掌と自分の手を重ね合わせた。
暖まっていた体温がキーボくんの装甲に吸い取られ、お互いに温くなる。
『キーボくんの体は硬くて冷たいけどさ、私は案外そういうところも良いと思うんだ。』
「……それは何故ですか?」
キーボくんは訝しんで訊いた。
『こんな体なら、たとえ目を瞑ってても確実にキーボくんだって分かるからね。硬くてひんやりしてるけど、表面がすべすべで、ちょっと内側からモーターの動く音みたいなのも聞こえて……これはキーボくんなんだってすごく自覚できる。』
他の人でも肌が常に冷たいのはいくらでもいるし、個性の1つと捉えればどうってことない。
『だから私はキーボくんはこのままでも良いと思う。』
「……誉稀さん………!」
泣きそうな顔をしながらキーボくんが勢いよく私を抱き締めた。
「嬉しいです! 僕のことをありのままに受け入れ肯定してくれるなんて……さすがは飯田橋博士の助手ですね。僕に涙腺があったらきっと今ごろ号泣しているところです……!」
涙脆いのに涙は出ないらしい。
硬くて冷たいボディが体にぶち当たったので少し痛かったけど、キーボくんの嬉しそうな声を聞いてどうでもよくなった。
私もキーボくんの背中と頭に手を回し、ゆっくり撫でる。痛覚があるらしいから、多分この程度の感触も分かるだろう。