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君と私と(非)日常

第15章 彼は彼女で、彼女は彼で。


「………」
図書室に佇む男は読んでいた本を閉じる。
今しがた梯子から落下した少女に近寄って意識の有無を確かめた。
「……ククク。落ちた先に分厚い本が置いてあって、それが頭に当たっちゃうなんてネ」
――彼女なら姉さんの友達になれそうだ。
――チャンスだ、今ここで殺してしまおう。
神宮寺は希灯の頭に手を回し、首を折ろうと力を込めた。
「……おやめなさい、是清」
「うっ……ね、姉さん?」
希灯から手を離し、神宮寺は自身の頭を押さえる。
「姉さん……今、僕は姉さんの友達を作っているところなんだ。だから待ってて」
額にうっすら汗を浮かばせながら神宮寺は再度希灯に触れる。
「殺してはいけません。意識がないのはチャンスです……死後の世界は肉体がありませんから、背の低い可愛い女の子なんて生きてるうちにしか触れ合えないのです」
「う、うん。そうか……じゃあ、姉さんにしばらく体を貸すヨ。分かってるだろうけど………誰かが入ってきたり、彼女が目を覚ましたらすぐに僕と入れ替わってネ」
「えぇ、もちろんよ……」
希灯の側に座り込み、神宮寺は口元を隠していたマスクを下げた。
誰にも見られることのない口紅が薄暗い室内で静かに艶めく。
「……可愛いわね。髪も柔らかくって、唇もふわふわで、体温も温かくって………」
細い指先で希灯の睫毛を撫でる。
神宮寺は彼女の上半身を抱き上げ、自身の膝の上にもたれ掛からせた。
「弟も愛しいけど……妹も欲しかったわ。だって他人の女の子でさえこんなに可愛いんですもの……。可愛くないわけがない」
髪の毛を手櫛で解かすように撫で、神宮寺はうっとりと目を閉じた。




『…………?。』
いつの間にか、気を失っていたみたいだ。
確か、図書室に是清くんと一緒に居て、それで梯子から落ちて……?。
微かに白粉の匂いが鼻を掠める。
ぼんやりと見えたのは深緑色をした人影だった。
是清くんにしては妙に白い面積が多い気がする。
段々とはっきりしてきた視界に、見慣れない赤く染まった唇が映った。
……誰だ?。
目を閉じて私の頭を撫でている人物に疑問を抱く。
是清くんにしては睫毛が長くて多いし、しかも何か胸の辺りがふっくらしている気がする。
これは一体何が起こっているんだろう……?。
「………あら?」
小さな紅い口から、声が零れた。
「あなた、とても綺麗な目の色をしているのね。不思議な色だわ……」
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