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君と私と(非)日常

第15章 彼は彼女で、彼女は彼で。



『ハシゴめっちゃ楽しい……。』


私は暇潰しで図書室に来ていた。
高いところの物を取るための梯子に上り、部屋を眺める。
背が低いから、目線の高さがいつもと違って楽しいのだ。
本を退かし、棚の上に腰かける。落下防止に梯子の一番上のステップに足を乗せた。
多少埃っぽいけど、そんなのは気にならないほど新鮮な気分だ。
『あ、誰か来る。』
誰かの足音が近付いてくるのを聞いて、扉を注視する。
入ってきたのは背の高い細身の男だった。
神宮寺是清くんだ。
「……何をしてるんだい?」
棚の上の私に気が付き、訝しげな目付きで首を傾げる。
『高身長の是清くんには分からないだろうね。目線が3mアップすることの素晴らしさはもはや快感!。猫の気持ちもよく分かる……!。』
「へぇ、煙とお揃いだネ」
『馬鹿じゃなくても煙じゃなくても、高いところが好きな人は割りと多いと思うんだ。』
是清くんはテンションの上がった私をやや無視しながら本の山を漁る。
彼のことだからどうせ民俗学の書物が欲しいんだろう。
『そう言えばこの前、最原くんがここでエッチな本を読もうって誘ってくれたんだけど、その時読んだ本が丁度是清くんの近くにあるよ。着物の女性が巨大なタコに襲われてる絵とかあったの。』
「春画だネ、遠慮しとくヨ」
素っ気ない返事をすると、そのまま本を一冊選び取り立ち読みを始めた。
『何の本にしたのー?。』
「…………」
『……………。』
集中しているのか、それとも読書の邪魔だから無視しているのか。おそらく後者だろう。
話しかけない方がいいんだろうか。
是清くんを眺めながら足をブラつかせた。
『…………そろそろ下りようかな。』
棚の上を退屈に感じ始めた私は他の場所に移動することにした。
腰を浮かせて、棚から下りるために体の向きを変える。
次はどこで暇を潰そう。
そんなことを考えながら梯子に足をかけた。
『…………!?。』
不意に足を踏み外し、背中から落ちていく。
しまった……と思った次の瞬間に、意識が完全に飛んでしまった。



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