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君と私と(非)日常

第15章 彼は彼女で、彼女は彼で。


目をジッと覗き込まれる。
『こ、この色はカラコンだから……。』
よく分からない緊張から、呟くような口調で返答をする。
それを聞いてか、是清くんっぽい人はハッとした顔で言った。
「いけない、是清から入れ替わるよう言われていたのに…………」
そう言って下げていたマスクを元に戻すと、しばしの間黙り込んでしまった。
「………………」
ものの一瞬で睫毛と胸のボリュームが減った気のする是清くんが、静かに私を見据える。
『な……何…………?。』
嫌な予感がして少し怯む。
「……見たのかい?」
手がこっちに向かって伸びる。
『………!。』
肩を力強く掴まれ、思わず息を飲んだ。
尋常じゃない感じがとても怖い。
『だ……誰にも、言わないよ………。』
微かに声が震える。
「…………」
是清くんが溜め息を吐いて、私の肩から手を下ろした。
「……まぁ、いいヨ。君は姉さんに生きてる状態を気に入られたんだ。だから姉さんの所にはまだ送らないでいてあげる」
そう言うと、スッと立ち上がり図書室から出ていってしまった。
『…………。』
扉が完全に閉められるのを見届けると、一気に張りつめた糸が切れたように力が抜けた。
『な、何だったの……?。』
姉さんがどうとか……。送るとか、気に入られたとか……全然繋がらない。
それにさっきの是清くんの変化も気になった。
本人に訊いてもこれ以上は教えてくれなさそうだし、きっと他の人も知らないだろう。
気になるけど……無理に調べたら是清くんが嫌がりそうだし、彼曰くの「姉さんの所へ送る」をされてしまうかもしれない。
それが何を差すのかは皆目検討がつかないけど、何にしろ悪い予感しかしない。
……まぁ、知らないままの方がいいのかも。
そうは思いながらも悶々と考え、追及の諦めがつかないまま自室に帰る。
許容範囲外なことを短い時間帯に大量に叩き付けられたものだから、整理しようとしてもちっとも纏まらない。
気絶した直後に見た是清くんは幻覚だったのかとも考えた。
だけど頭を撫でる手の感触も、女性のような細い発声も確かに覚えている。
それに未だに、あの時の白粉の匂いが体にまとわりついているような気がした。





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