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君と私と(非)日常

第12章 君と私と愛の鍵①


「そう、特別なんだ。信頼はともかく、やってきた功績でなら幹部よりも上だったし……何より、希灯ちゃんはオレの情婦だったからね」
情婦?。情婦って確か、愛人みたいな……?。
『そうだったの……?。』
驚いて思わず当事者を装わずに訊いてしまう。
「あれ、あんなに熱い夜を越して来たのに希灯ちゃんったら忘れちゃったの?」
『う、うん……。』
「オレの腕に甘噛みしたり、切ない表情で舐めしゃぶってくれたり一生懸命腰振ってくれたりしたのに?」
めっちゃ大胆だな……。私まだ処女だし想像力が追いつかない。
「……でもまぁ、そういう仲だったからって甘い目で見たのが間違いだったのかもね。まさかオレ自身が決定的な証拠を……しかも君が狙ってたのは組織の機密情報だけじゃなくって、このオレの命だってことが今日確実になってしまった」
『……どうして殺されるって気づいたの?。』
何だか海外ドラマの話を聞いているようで、興味本意で訊いてみた。
「そりゃあ、希灯ちゃんが妙にそわそわしてたからね。思い悩んだような……躊躇うような、そんな様子でいたから何かあるんだろうなとは思ってた」
王馬くんはポケットからさっきの小瓶を出す。
「で、オレがシャワーを浴びて出てきたら、君がこの薬を用意しているところを目撃してしまったってわけ。希灯ちゃんは咄嗟にシーツの皺の間に瓶を隠したけど、見ちゃったからには放っておけないし阻止させてもらったよ」
王馬くんが小瓶を放り、それがベッドシーツの上に転がる。
数粒の錠剤がシャラシャラと頭の近くで音を立てた。
「……希灯ちゃん、オレ知ってるよ。君の本来の所属組織から、もう随分前からオレを暗殺する命令が下ってたんでしょ」
王馬くんが起き上がり、私の顔を覗き込んだ。
「何で今まで殺さなかったの? チャンスならいくらでもあっただろうに……。しかも躊躇いながら殺そうと準備してた辺り、君の組織から自身の身を危ぶまれる事態になりかねないから渋々って感じにも思えるね?」
標的が近くに居ながらいつまでも殺さずにいる暗殺者に対して、雇い側が暗殺者を始末することを考える………世界のどこかでありそうな話だ。
『……私は、王馬くんのこと殺したくないよ。殺したらもう会えないし……でも殺さないまま消されたらもう一緒に居られないし…………。』
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