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君と私と(非)日常

第12章 君と私と愛の鍵①


「まぁ、これで希灯ちゃんは動けなくなったね。スパイなのを知ってて今まで組織内を泳がせてたけど、こんなに早く尻尾を見せるとは思わなかったよ」
首筋に顔を埋められ、生温い息が何度も掛かる。
朦朧とする意識のなか、されるがままになるのが怖くなった私はろくに動かない手で王馬くんを押し退けようとした。
「あ、まだ抵抗する力残ってたんだ? じゃあ元気いっぱいな希灯ちゃんにプレゼントをあげよう」
そう言って王馬くんはポケットから小さな2連の輪っかを出し、私の両手の親指の付け根に装着する。
『な……何、これ………。』
手錠ならぬ指錠らしい。案外抜けないし可動範囲も狭いから辛い。
「にしし……もう抵抗しない方がいいよ。無理に動いたら親指折れるからね、それ」
『…………!。』
指が折れると聞いて血の気が引いた。
怖い。骨折レベルの痛みは嫌だ。
「うん、ちゃんと大人しくしていい子だね。痛い思いしたくないんなら、なるべく暴れないように気を付けてよ。こればっかりは嘘じゃないからさ」
クスクス笑いながら王馬くんは私のブレザーのボタンを外した。
「半年前だったかな……希灯ちゃんがオレの組織に入ったのは。仕事もヘマせず、周りを凌駕する程の働きぶりを見せた君は組織の末端から一気に幹部の一歩手前の地位まで昇り、オレともたまに顔を合わせるようになったんだ」
『……。』
王馬くんの中の私、とんでもない設定になってるな……。
「希灯ちゃんはオレの性格をよく理解してくれたし、気が利くし良い話相手だった。それに優秀な働き蟻だったから駒としても最高だったんだ」
覆い被さるような体勢をやめ、王馬くんは私の脇に寝転がった。
中途半端に脱がされた服がどこか侘しさを感じさせた。
「でも、幹部の内でこんな噂が立ったんだ。希灯誉稀は諜報員だって」
王馬くんは私の髪の毛で遊びながら続ける。
「幹部の皆はさっそく希灯ちゃんを始末しようと言ってきたけど、まだ噂でしかないから決定的な証拠を掴むまでは待てってオレが命令して止めた。……他の手下なら疑いがかかったらすぐにシベリア行きにさせるけど、希灯ちゃんは特別だからね」
『特別……?。』
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