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君と私と(非)日常

第9章 ある朝の夜這い


そんなことを考えながら呆けていると、口のなかに舌が侵入してきた。
こんなこと初めてだ。
不慣れだからか、それとも狛枝くんが気持ち悪いからか。
とてつもない吐き気と不快感が鳥肌となり、背中全体にゾワリと走っていった。
歯の1本1本を舐め取るように隅々まで舌が這う。
複雑な水音を掻き鳴らされながら、ふと自分が呼吸してないことに気付いた。
『………っ!。』
意識した瞬間、急に苦しく感じて手の近くにあった狛枝くんの白い髪を引っ張る。
やっと放してくれた口からゆっくりと透明な糸が引き、そして音もなく切れた。
『はぁっ、はぁっ……こ、狛枝くん、えっと……。』
荒くなった呼吸を整えようとしつつ、満足げな狛枝くんにこの行為の理由を聞く。
『なん、で……こんなこと、するの?。』
口元を拭いたい。気持ち悪い。泣きそう。
「そんな顔しないでよ。これからもっとすごい事が起きるかもよ?」
服の裾から手を入れられ、素肌を撫でられる。
あぁ、嫌だな。
経験ないのに。狛枝くんのこと好きじゃないのに。監視カメラが見張ってるのに。いつ誰が入ってきてもおかしくないのに。
狛枝くんがしようとしてることは、遊びでも殺しでも裁判でもない。
「いいよね、希灯さん」
いいわけないよ、こんなこと。
「好きだよ。ボクの愛を体で受け止めてほしいんだ」
愛?。うんざりする。ただの強姦だ。
「ほら見てよ、キミのおかげでこんなにズボンが苦しくなっちゃった」
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。
口から零れる他人の唾液も、胸に食い込む指の感触も、股に当たる硬い熱も、全部全部大嫌いだ。
放されて自由に動く片腕を動かして、近くにあるものを探る。
何でもいい。硬くて掴みやすくて相手を怯ませられるものなら何でも。
あぁ、枕しかない。でもこの際だ。何とか反撃しないと。
『……えい!!。』
左腕を大きく振りかぶり、枕を狛枝くんの頭にぶつける。
「うわっ……ちょっと、希灯さ……」
何度も何度も、中身の羽根が飛び散ってもお構いなしに狛枝くんを叩き続けた。
気付けば私の上から狛枝くんは退いていて、ほぼ自由の身になっていた。
『もー!!。やだッ!。』
羽根がスカスカになって皮とカバーだけになった枕を最後に投げつけながら立ち上がる。
『最低!。バカ!。婬猥チリ毛ゴミ虫!!。もう自由時間に一緒に行動してやんないんだから!!。』
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