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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


『い……イズルくん、あのね……。』
口ごもっていると、ふいにカムクラは手を伸ばし希灯の顔に手を当てた。
『………?。』
希灯はその意図が分からず困惑する。まるで今からキスでもされるんじゃないかと思うほど、寝そべる希灯とそれを見下ろすカムクラの距離は近かった。
緊張から希灯の鼓動は拍を上げ、顔が少し熱くなる。目元を覆うように動く掌に思わずギュッと瞼を瞑った。
「ああ、やっぱり」
カムクラの指先が希灯の額を撫でる。前髪の下に異物があるのを確認し、爪に引っ掻けたそれを躊躇なく引き剥がした。
『……ッ痛ぁ!!。』
希灯が即座に両手で額を押さえる。
ここには確かアレがあったはずだ。奪われたものに意識を向けながら見ると、思った通りカムクラの手にはクタクタの絆創膏があった。
「まったく、怪我もしてないところにこんなものを貼って……。さすがに僕が貼ったときのものではないみたいですが、かなり露骨な執着心ですね」
半ば呆れたようにカムクラが希灯を見据える。
以前ケガした箇所に同じように絆創膏を貼っていることがバレた希灯は先ほどとはまた違う恥ずかしさを覚え、額に当てていた両手をそのまま目の位置にスライドさせた。
『……なにか文句ある?。』
何を言うべきか分からず希灯は震え声でそんな憎まれ口を叩いた。
「文句という程ではありませんが……軽度ながら貼ってあったところの皮膚がかぶれています。長く貼りすぎるなと忠告したはずですよ。あと貼り方が下手だったので本当に怪我をしていたとしても絆創膏の意味は成していなかったでしょう。それにどうせ貼るなら怪我しているところに貼ってください。腕も足も傷だらけなのに何を放ったらかしてるんですか」
『文句じゃん。全部文句じゃん。』
つらつらと出てくるカムクラの言葉に希灯は耳を塞ぎたくなりながら返す。
「とにかく、次また怪我したら僕に言ってください。僕の予想通りあなたは手当てが下手すぎる」
『頼って、才能に依存してるとか言わない……?。』
「まさか。あなたの手癖が改善するまで僕が矯正させるだけです。自分で出来て損はないですよ。元々が不器用ってわけではないんですから、あなたならすぐ出来るようになるでしょう」
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