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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


『あのさ……逆ギレしていっぱい暴れちゃってごめん。怒ってない?。』
「別に怒ってなどいませんよ。辛気くさい顔はそろそろ止めてください」
『相変わらず、何とも思わないんだね。』
希灯が溜め息を吐きながら項垂れる。けれど呆れて笑っているようなニュアンスでもあった。
『なんだか……悩んでるこっちが馬鹿みたい。』
三角座りで水平線を見つめながら呟く。希灯がどんなに乱暴に振る舞おうと、カムクラにとっては他愛もない束の間に過ぎなかった。
何をしても同じ。居ても居なくても同じ。
希灯は憂鬱になりながら抱え込んだ膝に顎をつけた。
「あなたの悩みは"僕ともっと仲良くなりたいのに今以上に仲良くなれそうにない。距離を詰めようとしている自分を僕が迷惑に思っているかもしれない"……という感じでしょうか。とてもツマラナイ悩みですね」
『ひどい感想。私、何日も悩んでたのに。』
不貞腐れたように希灯が脚を投げ出して後方に手を突く。
視線は満天の星空に向かったが、今の希灯には微塵もキレイだと思えなかった。
『あーあ、つまんない。君のことで悩んでなかったら今頃すっごい友情が芽生えてたかもしれないのに。』
「さぁ? おそらく僕の感受性は特に変わってはいないでしょう」
『またそんなこと言って!。感動とかはしなくてもせめて私への情くらい湧かせてよ。』
面白みのない反応のカムクラに希灯が不満げに返す。
カムクラは横目で希灯を見ながら言った。
「あなたは僕を普通の人間と同じように見すぎです。どうとも思わない、というのはあくまで僕基準の言葉です。あなたの印象的には悪いように捉えてしまうんでしょうが、僕としては「特に問題ない」と同義で使ってます」
『特に問題ない……?。』
「迷惑ではないということです。あなたがどのような言動を僕にしてこようと、嫌いになる要素は今のところありません」
淡々とした言葉に、希灯は少し期待を込めながら訊く。
『好きになる要素は?。』
「今のところありません」
『ふーん……そっか。』
ダメだこりゃ。希灯はそう口の中でそう呟きながら砂上に大の字になった。
「……ですが、後々なら可能性はあるでしょう。この合宿中、僕の無感情を否定する意見もいくらか聞きましたし何かが変わっていっているのかもしれません」
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