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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


『じゃあもうみんなのところに戻ればいいじゃん……!。私との関係を強制されて迷惑でしょ。正直に言ってくれば?。興味ないしどうでもいいから巻き込むなって。』
希灯の目つきは睨むように鋭くなっている。声にも怒りが含まれて、早口かつ低くぶっきらぼうな口調になっている。あるいは不機嫌を強調するためにわざとそうしている。
おそらく拗ねているんだろう、とカムクラが推測する。しかし単純にイジけているわけではなさそうだ。調子の良い言葉を投げかけたとしても解決にはならないだろう。
カムクラは希灯に言葉を掛ける。
「彼らが望んでいるのは僕とあなたの関係の修復です。僕が1人で過ごしていても彼らは気にしませんが、あなたが僕や彼らと過ごさずモノケモノを倒すことに日々を費やしているのは止めさせたいようですね。僕にとってはどうなろうと関係ないですが、輪を乱さないようにしたいなら彼らの希望に合わせた方がいいと思います」
『さっきから!。』
言い終わるや否や希灯が怒鳴る。
『……さっきから、彼ら彼らって!。イズルくんの意思は?。私の気持ちは?。どうなろうと関係ないって言うなら、本当にそう思ってるなら今すぐ向こうに行って!。私たち2人以外の意見なんかで動かないで!。』
そう言い捨てると希灯はまた歩き出した。砂浜から出ていこうとする背中をカムクラが追って歩く。
「……誉稀」
『…………。』
名前を呼んでも振り向きさえしなかったが、わずかに希灯の歩幅が狭くなったのをカムクラは確認する。
呼び止められることや後を追われることは不快ではないらしいが、おそらく希灯本人はそのことに気付いていないだろう。
あたかも話すことなどない、と無言を貫いて去っていこうとしている。
「誉稀」
『……。』
「今追いかけているのは僕の意思です」
そう言うと、希灯は立ち止まった。
今にも振り返りそうな背中がカムクラの前で次の言葉を待っている。
「あなただって以前のように戻りたいんじゃないですか? 1人で居たいという気持ち自体は別にいいと思いますが、僕にはあなたが他人と距離を置くことで苦しんでいるように見えます」
カムクラが言いながら少しずつ希灯に近付く。
希灯はまだ振り返らない。
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