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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


火の近くで大勢でざわついている様子がキャンプファイヤーを楽しんでいるようにも見える。
しかし見つめる先は少しずつ遠のいていく1人の生徒に集中していた。小さくなった姿が暗闇と同化しかけている。
「……何してるんですか」
希灯を見て騒いでいる人だかりの背後からそんな声が掛かる。
「カムクラ……!」
その場の全員が振り返ってカムクラを見た。
「何を揃って誉稀を眺めているんですか? 野次馬にしては見どころなど無いように思いますが」
訝しんで生徒達と希灯を交互に見ながらカムクラが言う。
「こうなったら作戦変更よ……! カムクラ、男を見せなさい!」
「希灯さんと話し合ってきて!」
「そうだな、それがいい! 行ってこいカムクラ!」
自棄になった皆から背中を押され、カムクラが希灯の方向へ追いやられる。
「……ああ、"誉稀と僕"の野次馬でしたか。何が目的か分かりましたが……必ずしもあなた方が期待する展開になるとは限りませんよ?」
「うるせぇ! 女1人救えないで何が超高校級の希望だ! さっさと行け!」
「私からもお願い……希灯さん、ずっと元気ないんだ」
「男死なんかに頼るのは癪ですが、希灯さんが最も信頼してるのは多分あなたです……! 今より酷くなったらどうなるか覚悟してください!」
やいのやいのと急き立てる一同にカムクラは溜め息を吐いてから、まっすぐ希灯の元へ向かった。



波の音と、遠くではしゃいでいる生徒達の声が聞こえる。
希灯は先ほどより落ち着いた様子で浜辺を歩いていた。
『(やっぱり、今は1人の方がいい。無理に一緒に居たって苦しいだけ……)。』
寂しさや虚しさを誤魔化すように少しでもキャンプファイヤーの火から離れる。
このまま誰も居ない場所まで移動しようかと考えていると、ふと希灯は近付いてくる誰かの足音に気付いた。
『…………?。』
七海や小泉が付いてきたのかと思って振り返ると、歩いてくる人影は予想より少なくて大きかった。
夜の闇のなか、異様に長く多い毛髪が潮風に吹かれて蠢いている様子がうっすら見える。いつかの昼間のように、暗がりからこちらを見つめる視線を感じ取った。
『(どう考えても、あれはイズルくんだ……!)。』
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