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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


誰がどう接しようとも、希灯が心を開いてくれない状態になっている。希灯が立ち直らない限りこの問題は解決しない。
それは希灯も分かっていた。悪い状況を作っているのは他でもない自分だった。けれど、どうすればいいのか分からない。
泥濘に腰まで浸かってしまったように、どうしようもなく動けない。
寄り添ってくれている七海と小泉に申し訳なく思いながら希灯がゆっくりと立ち上がった。
『……真昼ちゃん、七海ちゃん。話を聞いてくれてありがとう。ちょっと、火が熱いからさ……私は少し離れとくね。』
いつになく疲れた顔で2人に向けて微笑むと、希灯は暗がりへ向かって歩いていく。
1人になりたい、と言われた気がして七海と小泉は追わずに見送った。
「小泉おねぇ、話終わった? 希灯おねぇと何話してたのー?」
数分構ってもらえずにいた西園寺が少し拗ねたように頬を膨らませながら小泉に近寄った。
希灯とカムクラを2人きりにする計画を知っている者たちも上手くいってないことを気にしてか集まってくる。
「希灯さん、行っちゃったねぇ……」
「むっ?! 何故あんなに遠くまで歩いていくんだ? もうすぐ皆で花火をするというのに協調性に欠けているではないか……僕が呼び戻してこよう!」
「待て、兄弟。あの背中は俺たちが追うべきじゃねえ」
走り出そうとする石丸を大和田が止める。
「希灯さんは……思ってたよりも深刻みたい」
「地味なりに病んでんなぁ! 自分で自分を慰めきれてねぇからストレス溜まってんじゃねぇか? パンツに手を突っ込めって誰かアドバイスしに行ってやれよ!」
「えぇ?! 大変だっ、ぼくに任せてっ!」
「ふざけてる場合じゃないでしょ! ていうか、これどうすんのよ……? どうにかしたいけど追うのも放っとくのも何か違う気がする……!」
何人かが騒ぐのを見て、興味がなかった他の面々も焚き火の周りに近寄ってきた。
「あれ? 2人きりにするって言ってたっすけど上手く行ってない感じっすね?」
「誉稀ちゃんとイズルちゃんの距離、めっちゃ離れてるっすねー!」
「冬子ちゃん、恋愛小説的には今の状況ってどうなの?」
「知らないわよ……でもあたしが読者だったら暇すぎて読むの止めてるとこだわ」
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