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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


「……ここに座ろっか。飲み物取ってくるね」
『う、うん。ありがとう。』
七海は意外にもカムクラの真向かいの位置を指定し、希灯に腰を下ろさせた。希灯とカムクラは木と炎に遮られてお互いの姿は見えない。
安心する反面、少し寂しさを感じている自分がよく分からなくて希灯は更に隠れるように身を縮こまらせた。
そんな希灯の背後で、ドリンクを取りに行きながら小泉が七海に声を潜ませて言う。
「ち、千秋ちゃん? まずはカムクラの近くに座らせて様子見って手筈じゃなかったけ?」
「うん。でも希灯さんの手、震えてたから」
だから敢えて違う場所に座らせた、と七海が答える。
「そっか……じゃあ仕方ないね」
大きなクーラーボックスから適当に3本のジュースを取り出し、また希灯のところに戻る。
炎の前にある小さく丸まった背中を見て、小泉も今の希灯にカムクラの隣は無理だと納得した。
「はい、この味でよかった?」
小泉が希灯にジュースを手渡し、七海と挟むようにして希灯の隣に座る。
「もうすぐ終わりだね、合宿」
『……うん。』
「希灯さんはどうだった? 合宿は楽しめた?」
希灯は数十日間の記憶を思い返す。
才能のための合宿は、モノクマのせいでトラブルも多かったが課題自体はとても上手くいっていた。才能の発揮も、才能以外のことに挑戦する祭りも楽しんで取り組めた。
『楽しかった。七海ちゃんと真昼ちゃんはどうだった?。』
「もちろん、楽しかったよ」
「だね。私も」
少し遠い目をしながら返事を聞く希灯に、小泉が気まずそうに言う。
「……ねぇ、誉稀ちゃん。2週間くらい前にさ、誉稀ちゃんを色んな人が誘ったりしたよね? 気付いてるとは思うけどさ……あれ、私たち皆で仕組んだことだったんだ」
『うん……知ってる。』
「それでさ、あの……終わった後から、誉稀ちゃん、カムクラと全然遊ばなくなっちゃってたけど………あれってやっぱりアタシ達の計画のせいかな? だとしたら、アタシ謝りたくて……」
眉尻を下げながら小泉が訊く。希灯は困ったような表情で焚き火の方向を一瞥した。カムクラのことを気にしているようだ。
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