• テキストサイズ

君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


「冗談を言っている場合ですか。今日は大人しくコテージに帰って休んでください」
『そうだね……ひさしぶりに遊べると思ったんだけど、残念だね。』
カムクラに言われ、仕方ないと希灯は頷く。
ホテルに戻ろうと踵を返すと、よろけて倒れそうになってしまった。
『あ……イズルくん、ありがとう。』
寸でのところでカムクラに支えられ、体勢を直す。
「痛みますか?」
『ちょっと痛いけど、でも全然大丈夫。』
また1人で歩き出そうとしたが、体を支えたままカムクラが添えた手を離そうとしない。
『もしかして送ってくれるの?。』
「ええ、別にここで見送るだけでもいいですが」
『ううん。嬉しいから最後まで送って。』
2人で寄り添いながら1番目の島に帰る。
ホテルに着いて、希灯が別れを名残惜しく感じているとカムクラはそのまま希灯のコテージに入り、ベッドの上に希灯を座らせた。
「少し待っててください」
そう言って出ていったカムクラは数分の内に戻ってきた。手には救急セットの箱がある。
「まずは傷口を洗いましょう。それから消毒し絆創膏や包帯で手当てします」
『えっ。そんなことまで……もう大丈夫だよ?。』
傷は記憶を元に治るとプログラム開始時に聞いた。そこまで神経質に治療する必要はないだろう。
「あなた気付いてないんですか? 頭からも出血していますよ。それに……無意識でしょうが、歩くとき腹部を庇っていましたね? 痣でもあるんでしょう」
言われて鏡を手に取り見ると、確かに額に血が垂れていた。そして脇腹の痛みもカムクラの言う通りだった。
『あはは……思ったより大ケガだったみたい。せっかくだし、お願いするね。』
希灯が患部の汚れをシャワーで洗い流し、ベッドに座り直すとカムクラは救急セットの内容物を出し消毒液とコットンを手に取る。
「前髪を上げて傷を見せてください」
言われた通りに両手で髪を退けて、出血のある生え際をあらわにする。
消毒液を染み込ませたコットンを患部に当てると、思ったより傷に染みて痛かったのか希灯は避けるように身を引いた。
「動かないでください」
『う、だって……。』
顎を掴まれ固定されながら消毒を受け、ガーゼで止血してから絆創膏を貼られた。
「小さい傷でよかったですね」
/ 203ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp