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君と私と(非)日常

第29章 ややこしい2人


『そうだね。もっと酷い傷だったら動けなくなってたかも。それでモノケモノにトドメを刺されちゃったりして……。』
生え際の絆創膏を触りながら希灯が返す。
『でも、もし死んじゃってもプログラムだし怪我みたいに何もなかったことになるのかな?。』
冗談めかして笑いながらカムクラに目を向けると、カムクラは少し物憂げに希灯から目を逸らした。
「さぁ、どうでしょうね」
また血の滲み始めた他の患部の治療も始め、希灯は全身絆創膏と包帯だらけになってしまった。
『罪木さんとか田中くんみたい。』
身体中の患部を撫でながら希灯が率直な印象を口にする。思っていたより傷だらけだったようだ。
「傷が剥き出しだと不衛生ですし、血で服や家具を汚したくないでしょう。それに治るまでは痛みが続くでしょうし……ほら、さっさと服をめくってください」
まだ処置をしていない場所があった。湿布を手にカムクラが希灯のセーラー服の裾をたくし上げるよう催促する。
『えぇっ、いいよ。自分で貼れる。なんか恥ずかしいし、自分でやるよ。』
打撲した脇腹を服の上から隠しながら希灯が言うと、カムクラは少し眉をひそめた。
「あなたはクラフトワークという如何にも器用そうな才能を持っていますが、手芸や工芸に関すること以外は異常なほど不器用ですよね」
『うっ……。』
否定できなかった。料理や掃除はどちらかといえば不得手だし、絆創膏も自分で貼るといつもくしゃくしゃだった。
「湿布が1枚無駄になるのを分かっているので僕が貼ります。あなたの羞恥心より湿布の方が貴重です」
だから早く患部を見せろ、とカムクラは急かす。
観念した希灯はセーラーの下に着ているピッタリとした黒いインナーごと捲り上げ、肋骨の下辺りまでの素肌を晒した。
左の脇腹に手の平程の大きさの痣が浮かび上がっている。鮮やかな青紫色をしていて、本当につい先ほど交戦したものであることが窺えた。
「内臓に違和感はありませんか? あなたの様子からして外傷しかなさそうですが……仮に臓器が損傷していた場合、記憶を元に復元するという仕様はどこまで機能するんでしょうね」
『ええ……?。私で試さないでね。』
不穏なことを言うカムクラに対して希灯は傷を隠すように服の裾を下ろす。
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