• テキストサイズ

君と私と(非)日常

第28章 爺共からの床急ぎ


いくら交ざり合ったって満足できないのは分かっているけれど、少しでも悔いを残したくない希灯は切れ切れながらに懇願した。
「あなたって本当に僕のことが……」
そんな希灯の様子を見てカムクラが呟く。後に続く言葉をそのままに、希灯にキスをして抱き締める。
『………。』
カムクラからの愛撫を嬉しそうにはにかみながら希灯もまた強く抱き締め返した。
ずっとイズルくんと一緒にいたい。この時間が永遠に続けばいいのに。
どちらも叶わないのは知っている。だからせめて今だけでもイズルくんを限界まで欲したい。
私はイズルくんのために、イズルくんは私のためにセックスしてるんだ。
決して希望ヶ峰学園の研究なんかのためだけじゃなくて……愛し合う2人の男女としてここに在りたい。
すがるような心地で、希灯はカムクラの頬を撫でた。
「誉稀……そろそろいいですか」
『………うん。いいよ……イズルくん。』
希灯が切なげに頷く。明らかに名残惜しそうな様子だった。終わらせないでほしい、と必死に目で訴えている。
やれやれとカムクラは同じように希灯の頬を撫で返した。
「あなたが望むなら、僕は夜が明けるまであなたと一緒にいますよ」
どうせ希灯の寮の門限はとうに過ぎている。用が済んだとしても職員棟に待機させられるだろう。部屋が同じか別になるかだけの違いだ。
内線で研究員を呼ばなければそれでいい。もちろん時間が掛かりすぎていると言って乗り込んでくる可能性はあるけれど……研究員なら評議会の意向に従って、きっと隠しカメラで盗撮してリアルタイムで確認しているはずだ。行為の最中に乱入するようなことまではしないだろう。
『ほ、本当に……?。』
「ええ。僕が信じられませんか?」
『ううん……今夜はずっと一緒にいたい!。』
満面の笑みを浮かべて希灯がカムクラに抱き付いた。
希灯と一夜過ごすことが可能だという論を数々思い浮かべたカムクラだが、ふと希灯の望みを叶える道理がないと思い至る。
別に1回で終わったっていいはずだ。それなのにカムクラは何故か希灯が納得するような提案をした。カムクラにとってはかなり非合理な提案だった。
けれど……希灯の喜ぶ顔を見て合理性がどうでもよくなってしまったのは確かだ。
/ 203ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp