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君と私と(非)日常

第28章 爺共からの床急ぎ


波のように押し寄せる陶酔感に堪らず悲鳴を上げると、やがて得も言えぬ痺れが全身に染みわたっていく感じがした。
『ッッ……!。…は、ァ、っかは………。』
目のなかを星の瞬きにも似た衝撃がチカチカと駆け、じわりと頭が真っ白になっていく。体内で爆発と溶解が同時に起こっているような奇妙な感覚に陥った。
首から上に熱が溜まって、まるで放熱が追いつかない。
変な気分だ。体の中が何だかおかしい。
自然と身体が仰け反るのにも気付かないまま、初めての感覚に困惑していた。
ただ、心臓のトクトクと打つ鮮明な拍が妙に心地好かった。
微かに痙攣しながら希灯はくたりとベッドに身体を沈める。
脱力した希灯の頬をカムクラが労るように撫でた。ピストンもまた穏やかなものに戻したようだ。
呼吸を整えながら希灯もカムクラの首筋に触れる。太く浮いている血管の感触が指先から伝わった。それから下顎骨をなぞるように手を移動させ唇を親指の腹で撫でると、カムクラはその仕草に応えて希灯に口付けた。
ふに、と優しく触れ合わせながら互いを抱きしめる。目を瞑るとカムクラの気配や先程の妙な感覚の名残が一層強く感じられた。
揺り動く髪の毛やベッドの軋み、シーツの衣擦れの音がする。密着した肌は熱いのに、汗はわりと冷たくて変な感じだ。あと……わずかながらお腹の下辺りを中心にまだ痙攣のようなものが続いている。
どちらともなく舌を這わせ、口の中で絡め合う。
『んっ……ふ、はぁ……。』
カムクラは希灯の呼吸のタイミングに気を配りつつ丁寧に口内を愛撫をする。
肉も骨も蕩けてしまったかのように、心地いい粘膜の熱と湿りがねっとりと互いの舌にまとわりついた。
『……は……っん。んぅ……。』
希灯が薄目を開けてカムクラを見る。真っ赤な瞳が希灯の視線に気付き、覗き込むように見つめ返してきた。
「…………」
『ふはぁ……うっ。イズル、くん……イズルくん……。』
一旦口を離し、垂れた唾液を拭いつつ希灯はカムクラの名を呼ぶ。
『もっと。……もっとキスして。もっと抱き締めて。イズルくんがしたいなら、私のこと、もっと乱暴にしてもいいから……私の全部をイズルくんでいっぱいにして。』
貪るように愛してほしい。欲望に任せて求めてほしい。
きっと今日みたいな日はもう2度と来ないんだから。
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