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君と私と(非)日常

第28章 爺共からの床急ぎ


研究員はボソッと自分本意なことを呟くと、カムクラに念を押し部屋から飛び出していく。
カムクラは見送りながら深い溜め息を吐いた。



数十分後、先程と同じ研究員が紙束を持って入ってきた。
「さぁ観念するんだ、カムクラ君。今度こそ決めてもらうからな」
「……ちなみに僕が選んだとして、相手の生徒の意志は確認するんですか?」
「もちろんするよ、契約書にサインと判子を捺してもらうだけだけどね」
まさか無理矢理には連れてこないだろうが、相手が断りにくくなるような卑怯な手を使うことだって希望ヶ峰学園はする。
現にカムクラが超高校級の希望になる前の人格も、多額の授業料の免除と引き換えに実験体になる道を選んだのだ。
別人になってしまったカムクラには関係のない過去だが、希望ヶ峰学園のやり方は何となく気に入らないものだった。
研究員の口振りから言っても、詳しい説明はせずに回りくどい規約を流し読みさせて契約に漕ぎ着けるつもりだろう。
「そんなことよりさっさと決めよう。これが1年生、これが2年生、これが3年生のリストだよ。この3年生は君と同級生だね」
そう言って研究員が紙を突き出した。
一応受け取って見るが、乗り気になれるような画像はない。
続いて2年生のリストを確認する。そこには一人、とても見覚えのある顔があった。
「(……窓からよく入ってくる奴………)」
希灯誉稀だ。職員棟のカムクラの部屋の窓辺にたまにこっそり現れる超高校級のクラフトワーカーで、カムクラはその度に窓を開けてやっている。
「どうだい、良いのは居たかな?」
「………………」
全く知らない女よりも、ある程度親しみのある女の方が何をするにも良いだろう。
どう断ろうと結局は加担させられるのだから、長く延ばさず早めに終わらせた方がいい。
この女には悪いが、くだらない研究の犠牲になってもらおう……。この件から一刻も早く解放されたいと、カムクラは添えられたペンで希灯の画像にマークを付けた。










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