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君と私と(非)日常

第28章 爺共からの床急ぎ


「カムクラ君、この中から誰か一人選んでごらん」
研究員が顔写真の沢山載せられた冊子を見せる。
顔写真の人物はいずれも若くてそこそこ美しい女性ばかりだった。
「……お断りします」
冊子に一瞬目を通すと、興味無さげに研究員に返す。
「ちょっとちょっと、そんなこと言っても困るって。評議委員会からのお達しなんだよ、「肉体が若いうちにするべき」って度々言われてるんだから」
評議会と聞いてカムクラは溜め息を吐く。
社会的地位が高いだけの老いぼれ4人だ。研究という名の道楽が欲しいだけなんじゃないかと思ってしまう程の事を今まで散々やらされた。
ツマラナイ。どうせ今回もろくでもない内容に決まっている。
「超高校級の希望の遺伝子から生まれる子供が一体どれ程の可能性に満ち溢れているのか、数年がかりで行われる経過観察プロジェクトなんだよ。大丈夫、女に孕ませた後は君が関わることもないし責任問題も学園側で負うことになってるからさぁ」
頼むよ~、と食い下がる研究員の言動は惨めでいて醜悪だ。自分の為だけを考えて他人の人生を踏みにじっている。
自分に与えられた仕事を最低限こなしたいだけ。給料が欲しいだけ。クビを切られたくないだけ。今必死に説得しようとしているのだって結局は全部自分の為だろう。
この研究員にとっては、きっと研究の成果なんてどうでもいい筈だ。
「……相手の女性はどうやって決めているんですか? 僕がいくら才能の塊だろうと、相手の女性の遺伝子も入るわけですから優秀な人間に育つとは限らないんですよ」
彼女らは恐らく一般人の中では良くも、希望ヶ峰学園からスカウトされるような秀でた才能は持ち合わせてはいないだろう。
そんな相手と子を成したとして、何か画期的な発明や社会への貢献に繋がるというのか。
「あぁ、なるほどね。確かに母体も優秀な人材であった方が良い子供が産まれやすくなるかもしれない。才能のハイブリッドってやつだね…よし、早速……!」
「超高校級の生徒や卒業生を連れてきたからと云っても、僕はまだこの研究に賛同した訳ではないので「やる」と言ったことにはなりませんよ」
良いことを聞いたとばかりに部屋から出ようとする研究員の背中にそう言うと、残念そうな顔で振り返った。
「あーもう、許可もらえなきゃ怒られるのに……今すぐ学内の女子生徒でリスト作ってくるから絶対その中で一人決めるんだよ! 絶対にね!」
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